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2012年9月15日 (土)

列車の愛称名いろいろ。

 日本でも新幹線、特急列車など愛称名が付けられている列車は数多くありますが、その命名法は国それぞれ。日本では新幹線は当初「ひかり」「こだま」といった抽象名詞がつけられていたが、運転範囲が広がるにつれ「あさま」のような地名や「あおば」城、「つばさ」「さくら」といった伝統の特急列車名がつけられるものが出てきたわけで。
 韓国では「セマウル号」「ムグンファ号」等名づけられているが、これは愛称名がそのまま列車の等級(速度や通過駅の多寡)を表しています。これは台湾でも同様で、「自強号」「莒光号」等はいずれも列車の等級(太魯閣号ってのは沿線の地名だけど、事実上最速列車を示す等級だよね。)。
 ベトナムでは南北縦貫の所謂「統一鉄道」では単なるアルファベットと数字の組み合わせの列車番号を用いているが、サパのような観光地に向かう列車にはVictoria Express, Ratraco, Green Train, Livitrans,といった運営会社の愛称がつけられてるし、フィリピンでは山の名を冠したMayon Limitedなど、マレーシアKTMではExpress Rakyat、Sinaran Utara、そして日本から中古で輸入したブルートレインを用いた夜行列車にはMalayan Tiger Trainという愛称が付けられている。
 日本の場合、愛称名は主に乗客誘致の為の宣伝効果や、より実利的には指定券販売の容易性を目指してつけられたと考えてよいだろう。かつて「からまつ」「はやたま」「山陰」「ながさき」という愛称名付きの普通列車があったが、他の夜行鈍行と異なりこれらにのみ愛称名がつけられていたのは、これらの列車が寝台車を連結していたからに他ならない。「第123列車の寝台を1枚」というのよりは、「からまつ号の」といった方が判り易いからね。
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SEMBRANI号のサボ。日本の鉄道好きにはなんだか親しみが湧きますね。

 さてインドネシアでは、首都圏電鉄を除く殆どすべての列車に愛称名がつけられている。頻繁に列車の改廃があるので全部で何種類あるか数えたことはないが、恐らく100種類近くあるんじゃないだろうか。同じ区間を走っている列車でも異なった愛称名をつけていたり、ネタがなくて面倒になったのか、極めて安易な愛称名をつけているローカル列車もある。日々出掛ける度に接しているこれらの列車の愛称、有名な地名を冠しているかと思えば、辞書や地図で調べても何に因んだ愛称なのかさっぱりわからないものもある。 なので、スンダ語やジャワ語の判る事務所のスタッフの知恵も借りつつちょっと調べてみたら、こんな感じになりました。

1.地名を冠しているもの。
2.宗教上の伝説、伝承、民話等に因んだもの。
3.その他。

まず1.だが、多いのは、山や川の名前をつけているもの。
全車一等Eksektifの特急はこれが多い。例:
 アルゴ・ブロモ・アングレック(ジャカルタ・ガンビル~スラバヤ・パサールトゥリ)東ジャワ州のブロモ山+アングレック(蘭)より
 アルゴ・ラウ(ガンビル~ソロ・バラパン)中部ジャワ州のラウ山より
 アルゴ・ムリア(ガンビル~スマラン・タワン)中部ジャワ州のムリア山より
 アルゴ・ウィリス(バンドゥン~スラバヤ・グベン)東ジャワ州のウィリス山より
 マラバール(バンドゥン~マラン)西ジャワ州のマラバール高原より
中には、セレロ(クルタパティ~タンジュンカラン間)南スマトラ州の丘陵の名や、
 ラジャバサ(同)ランプン州の丘陵の名、など三等エコノミ列車に使われている例もあり。
 

川の名は三等Ekonomi列車に使われているケースが多いようだ。例:
 ボゴウォント(ジャカルタ・パサールスネン~ジョグジャカルタ間のACエコノミ列車)中部ジャワ州のボゴウォント川より
 ブランタス(ジャカルタ・タナアバン~クディリ)東ジャワ州のブランタス川より
 ロガワ(ジュンブル~プルウォクルト)中部ジャワ州のロガワ川より

二等Bisnisを中心とした列車の場合、地名+αというのをよく見かける。
 センジャ・ウタマ・ソロセンジャ・シンゴサリなど、Senja(夕暮れ)+Utama(第一の)という名づけ方だから、当然夜行列車だろう。いや、夕方に目的地に到着するという意味か。どっちでもとれるなあ。シンゴサリというのは、東部ジャワに13~14世紀にかけて存在した王国の名前。
 ファジャール・ウタマ・ソロファジャール・ウタマ・ジョグジャなどは、Fajar(夜明け)だから、こちらもやっぱり夜行列車か。

行先の都市名をつけただけの簡単な愛称は、比較的短距離の列車に多いようだ。
 チレボン・エクスプレス(ガンビル~チレボン等)
 シアンタール・エクスプレス(メダン~シアンタール)
 ランカス・ジャヤ(タナアバン~ランカス・ビトゥン)
 マディウン・ジャヤ(マディウン~ジョグジャカルタ)「ジャヤ」というのは「偉大な」「栄光の」という意味で、今もジャカルタの電鉄区間の駅名にある「ジャヤカルタ」が転じて「ジャカルタ」になったと言われている。
 プルウォジャヤ(ガンビル~チラチャップ)途中の主要駅プルウォクルトからとっているが、これもこの一種だろう。
 ジャカルタ首都圏電鉄JABOTABEKで急行運転していた時代の、デポック・エクスプレスベカシ・エクスプレスなんてのもこの仲間。
 カフリパン(クディリ~パダララン)11世紀クディリ王朝のアイルランガ王によって遷都された王都の名からってのも。

沿線の遺跡の名前を冠したものもいくつかみられる。
 プランバナン・エクスプレス(ジョグジャカルタ~ソロ等)世界遺産にもなっているプランバナン遺跡から。通常略してプラメックスと呼ばれる。
 プナタラン(スラバヤ・コタ~ブリタール)ブリタールにある、シンゴサリ王国のプナタラン寺院から。

より広範な地名を使う場合、古くからの呼び名を使うケースが多いようだ。
 パクアン・エクスプレス(ジャカルタ・コタ~ボゴール間をかつて運行していた電車急行)パクアンとはボゴール周辺のエリアの古い呼び名。
 ガジャヤナ(ガンビル~マラン)8世紀に中部ジャワに栄えた王国名。
 アルゴ・パラヒャンガン(ガンビル~バンドゥン)パラヒャンガンはバンドゥンの一帯の古い呼び名で、今でもパラヒャンガン大学等にその名を残している。
 リメックス・スリウィジャヤ(クルタパティ~タンジュン・カラン)スリウィジャヤ王国は7~14世紀の長期にわたり、スマトラを中心に栄えた王国。
 マジャパヒット(パサールスネン~マラン間のACエコノミ列車)マジャパヒット王国は、13~15世紀に東部ジャワに栄えた王国。
 バンテン・エクスプレス(タナアバン~メラク)現在の地域名であるバンテン州からってのもありますが。
  

中には、起点と終点の地名をあわせて列車名にしてしまっている合成地名ならぬ合成愛称名も見られる。
 アレック・スロクルト(スラバヤ・コタ~モジョクルト)SURabayaとmojoKERTOから。
 プロボワンギ(プロボリンゴ~バニュワンギ)PROBOlinggoとbanyuWANGIから。
 コミューター・スラム(スラバヤ・パサールトゥリ~ラモンガン)SUrabaya~LAMonganから。
 大分苦しくなってくるが、
 バングンカルタ(ジョンバン~パサールスネン)jomBANG~madiUN~jaKARTAだとか、 
 今は運転されていないようだが、中には
 ジョグロセマール(ジョグジャ~スマラン)JOGja~soLO~SEMARangなんて大技も。津田沼とか小美玉市みたいなもんか。
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クルトソノ駅に入線する「カフリパン」号。愛称のいわれを考えながら汽車旅を楽しみたい。

その2は、外国人にはなかなか分かりにくいものが多い。
 アルゴ・ドウィパンガ(ガンビル~ソロ)ドウィパンガというのは、ヒンズー教の神話で戦争の神インドラが乗っていた象で、17世紀ジョグジャのスルタンが自分の象にこの名をつけていたという。
 スンブラニ(ガンビル~スラバヤ・パサールトゥリ)ヒンドゥー神話のヴィシュヌ神が所有していた、空を飛ぶ馬。
 タクサカ(ガンビル~ジョグジャカルタ)ヒンドゥー教の神話に出てくる龍。
 スリ・タンジュン(バニュワンギ~ルンプヤンガン)ジャワの伝統儀式で演じられる、マジャパヒット王朝時代の叙事詩。
 スリ・レラワンサ(メダン~ビンジャイ、ベラワン)スマトラの民話に出てくる悲劇の英雄。
 プトリ・デリ(メダン~タンジュン・バライ)デリ王朝の王女。
 

3.その他としては、例えば、地方や特殊な言語によるもの、例えば、
 トゥランガ(スラバヤ・グベン~バンドゥン)昔のジャワ世界で乗物、即ち「馬」を指す言葉。
 ロダヤ(ソロ・バラパン~バンドゥン)スンダ社会の象徴である「虎」。
 パスンダン(スラバヤ・グベン~キアラチョンドン)スンダ人の土地の意。
 ブミ・グリス(ボゴール~スカブミ)スンダ語で「麗しい土地」。
 ハリナ(スマラン・タワン~バンドゥン)サンスクリット語で「鹿」。
 

何とも分類しづらいものとしては、
 ムティアラ・ティムールムティアラ・スラタン(東方の/南方の、真珠。上海のタワーのような名前だな。)
 パンダンワンギ(スマラン~ソロ間を以前運行していた列車。)パンダンという果実のwangi(香り)。
 チャンティック・エクスプレス(スラバヤ~ジュンブル間を以前運行していた急行列車。)チャンティックとは「カワイイ」という意味だが、列車名につけるか。
 ビマ(ガンビル~スラバヤ・グベン)日本人に最も有名な、伝統の夜行列車。終点スラバヤより遥かに先のヌサトゥンガラ列島スンバワ島のビマ市からとったのであれば、かつて大阪~鹿児島間のブルートレインに「なは(那覇)」とつけられていたのを彷彿とさせるところであるが、「Biru Malam(夜の青)」からとったか、「Bima Sakti(天の川)」からとったという説が妥当だろう。
 

 
 そんなわけで、ちょっと長くなってしまったけど、今まであまりネット上で見かけたことのないインドネシアの列車の愛称名についてちょっと調べてみました、のお話でした。
Gambir2011121000734
最近は色々趣向を凝らしたサボもあって楽しいです。

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