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2018年4月24日 (火)

ラカイン鉄道(南線)・キハ52の現状。

明けて日曜朝。全列車がキハ52による運行ということでSNS上では友人らの関心の高いラカイン“南線”に乗るべく、シットウェ市内の始発駅ピードーターへ向かいました。
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シットウェ市内の始発駅ピードーター駅。

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広くない駅構内ですが、整備改造作業などもここで行ってしまうようです。

正直な所感として、のんびりムードだった昨日の北線に比べ、“ロヒンジャ”に関する状況が比較的落ち着いている現時点でも、こちらの不用意な訪問はお勧めしません。その時々での状況を踏まえて最善かつ最も安全な判断を自己責任でキチンとしていただく必要があるかと思います。

特に撮り鉄の方におかれては、沿線には立入禁止地域も多い他、外国人の立ち入り自体は可能な地域であっても不用意に列車に望遠レンズを向けて、武器と誤認されて警察から発砲を受けたりする可能性も、冗談ではなく否定できません。ミャンマー語が出来なければ、ガイドを通じるなどして警乗や沿線警備の警察当局者からキチンと許可を得ていただくことが望ましく、現場での国鉄MR職員や警察官の指示にはきちんと従って下さい。

と、いう少々強い書き出しになりましたが、備忘録として当方訪問時の状況を書き留めておきます。
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ピードーター駅に留置された、綺麗な状態の2両のキハ52予備車。

ホテルからピードーター駅まで送ってくれた昨日迄の借上車の会社の若社長、駅員や乗務員などの関係者に、この人はヤンゴンから汽車に乗りに来た汽車好きで云々と説明をしてくれた模様。怪しい人じゃないよと。
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プラスティック製のロングシート化された車内。

この駅に留置されていたのは、キハ52がRBE5012、5014の2両と、本日の運行に入っているのがRBE5015で、こちら詳しい方によると、元キハ52-148だそうですが、いずれも元盛岡の“赤鬼車”。「平成2年土崎工場改造」と銘板にありますが、盛岡時代に一段窓化改造されており、雨樋なども撤去され(ネーピードー近郊所属車とは異なり)正面のオデコ上部分と側面が張り上げ屋根的にクリーム色の車体色に塗られているため、見た目は随分ツンツル感の強い、当方世代的には目蒲線の3000系更新車を彷彿とさせるいでたちです。
いずれも多少の水垢が残る程度で状態は良好に見えましたので、時折車両を入れ替えて使用しているのかもしれません。

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RBE5015号車を正面から。ヤンゴン時代に天地高が切り詰められているので、多少イメージは変わっていますが、見まごう事なき国鉄車。

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新潟製エンジンも現役です。

一緒に留置されていたRBT客車は801、810の2両で、こちらは使用されている気配はなく大分車体の腐食が進んでいる模様。

列車の出発は定刻の7:30を少し過ぎて。数名の乗客と、当方は運転助手席のすぐ後ろの全面展望席に陣取って、懐かしいエンジン音を聞きながら出発です。
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市の中心駅? シットウェ駅から、大勢のムスリムの乗客と警乗の制服警官3名(+実は私服も)が乗り込んできました。

ピードーター駅を出て踏切端の臨時?非公式停留場で数名が乗車し、次の停車駅は市名にもなっているシットウェ駅。近づいてくると、運転助手から運転席横の開け放たれた貫通路のプラ椅子に座るように招き入れられました。
シットウェからは、ざっと数えて40名くらいでしょうか、その恰好から殆どがムスリム(当地ではベンガリーと呼ばれることも多い)の方々のように見受けられる乗客が続々と乗り込んできます。
なのですがこの方々、同様にこの駅から乗り込んできたライフルを持った3名の警乗の警官や乗務員に促されることもなく、盛岡時代に設置された間仕切りの内側ですね、前後扉の間の客室スペースに自然に乗り込んでいきます。一方、運転台すぐ後ろのドアとの間の座席には、明らかに彼らとは違う、曰くラカイン族だという乗客が数名。車内は綺麗に棲み分けがなされています。カメラを向けようとすると運転手から「写真はやめとけ」と止められたので、刺激しないように気を遣っているのかもしれません。
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この間仕切りの向こう側がベンガリー、手前側がビルマ人とラカイン族と事実上棲み分け。当方は運転台横に“隔離”。

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路線図にも掲載されている正規のシットウェ大学駅は通過。廃駅なのか、大学休講期間中だけの措置なのか。

ここから現在の運行区間の終点となっているゾーブージャまでは30分少々。粗製急造がたたってか、あちこちで路盤が崩れかかっている線路を最高時速25km/hほどでゆっくりと走る列車から前面展望を眺めていると、運転手が、「ほらあれ、」と前方左右の集落を指さします。「あれがベンガリーのキャンプ」とのことで、ラカイン州北部の騒擾を避けてやってきた人々が居住する、所謂IDPキャンプというものです。
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ほらあれが、と運転手が指を差した先にIDPキャンプ。青色が目立つのはトイレ。

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途中の非公式“停留場”では、ムスリムと思しき乗客が多数乗り降りしていました。

勿論事前に衛星写真で見て、この沿線にそれらしい集落が幾つも沿線にあるのは確認していました。ホテル観光省のサイトでも、ラカイン州は外国人立入禁止の地方行政区はないものの、北部マウンド―などの騒擾地域の他、シットウェでもこれらIDPキャンプへの立ち入りは要許可となっていました。
実際目にして見ると、避難民キャンプという言葉から連想するような、粗末なテント張りではなく、この地域にはよくあるニッパ椰子で壁を作ったトタン屋根の高床住居で、集落を取り巻くように青いトイレ施設が多数建設されています。一定の狭い地区に密集して押し込められている感は強いですが、建物自体は地域の他の集落と比べてもそれほど粗末な印象は受けません。

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踏切には、国鉄職員である警手に加えて武装警官の姿も見えます。そして踏切のすぐ先は非公式停留場になっていて、列車を待つ乗客の姿が。

この路線、国鉄MRの路線図では途中に幾つかの駅名が書かれていますが、それ以外にも道路と交差する踏切や、こういったキャンプのすぐ近くで列車は何度か停車し、その都度ムスリムと思しき乗客の乗降が数名ずつ。
別のキャンプに住んでいる親族や知人との間を行き来したり、中には商売をしている人もいるようで、車掌(ラカイン族とのこと)もこういった無人停留所から乗車してくる乗客にマメに切符を売って回っており、少なくともこの地域内に限って言えば、キャンプ住民の移動は特段支障がないように見えます。
もっと言ってしまえばこの南線鉄道自体、この地域のキャンプに住む人々のために運行しているように感じられます。

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終点ゾーブージャに到着。

この方々は終点のゾーブージャ到着までに殆ど下車してしまっていました。聞くに、こちらはラカイン族の集落だそう。

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こちらは昨夕訪れた、列車の来なくなってしまった元の終着駅イェチャンビン駅。

折り返しの出発まで2時間ほど、パゴダとかあるんだよ、という添乗のオッちゃんに促されるまま集落内をお散歩。暫くの後、この人が声をかけた一軒の住宅に招かれ、どうやら村の名士のようなその家の主人と一緒に集落内の僧院などを一回りすることになり、その後は茶屋でお茶しながら折り返し時間を待ちます。以前はシットウェ技術大学のあるイェチャンビンまで往復して来る時間分をそのままこの駅での折り返し時間にしたため、余裕があるのですね。
茶屋ではさっきの列車で一緒だった運転士や車掌も寛いでいたので合流。コソッと聞いてみたら、案内してくれたオッちゃんは、予想どおり警察官、私服警官だそうで、村の中を案内というのは要は当方に対する監視だったわけですな。IDPキャンプとかに行かないように。
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こちらはホームがある一応正規駅。シットウェ市内方面へ向かう住民が列車を待っています。

そうこうするうちに2時間が経って折り返してシットウェに戻る時間に。

帰路のピードーター2列車も往路と同様に途中駅相互間でのベンガリーの方々の乗降は多く、この1日2往復の列車は沿線のIDPキャンプ相互間を行き来する住民の貴重な足となっていることがよくわかりました。
最後は当方も、その殆どが下車した、バスターミナル近くのシットウェ駅で一緒に下車し、出発するキハ52を撮って(勿論関係者に、そこで撮っていいかと確認した上で)見送り、ラカイン鉄道南線の旅を終えました。

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シットウェ駅(右奥)を発車して終点ピードーターへラストスパート。

ミャンマー国内のみならず、他の譲渡国を見渡しても、最早貴重な存在となったキハ52の稼働車、末永い活躍を望みたいところですが、それ以上にラカイン情勢、この沿線で自由に撮影が出来るような社会状況に早くなってくれることを心から祈ります。

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ラカイン車(手前)とピンマナ車(奥)の違い(笑)。

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